1. 検索体験の向上が経営課題に。知識ゼロの状態からスピード立ち上げが必要になった。
ーー データサイエンティストの力が必要になった背景を教えてください。
弊社は、休日に便利でお得な予約サイト「アソビュー!」を主とした事業を展開しています。今はアソビュー!で遊びを探しているゲストと、遊ぶ場所を提供するパートナーのマッチング精度向上に注力しています。アソビュー!はこれまでSEOを強みとして成長しており、現在も安定して新規のゲスト獲得ができています。
一方で、一度使っていただいたゲストにリピートしてもらうという点においては課題を感じており、2019年のはじめ頃から中長期の経営課題として明確に認識し、これからはゲストとパートナーのマッチング体験を改善させていこうということになりました。
ただ、社内に聞いても誰も専門知識がない状態で、まずは私自身が機械学習についてキャッチアップをするところからのスタートでした。
ーー どれくらいの期間で完成させるイメージだったのでしょうか。
目指すところとしては、世の中のECサイトに実装されているようなレコメンドエンジンは最低限として、動画サービスのネットフリックスや、音楽サービスのスポティファイに実装されているレベルを目指したいと思っていました。
また私たちはそのレベルに到達するスピードも最重視して取り組んでいます。スタートアップやベンチャー、あるいは新規事業部門などであればどこも一緒だと思うんですが、小さな失敗を繰り返して結果いかに早く安く完成させられるかが大事だと考えています。
今回のプロジェクトもスピードを重要視して3ヶ月でプロトタイプを完成させて検証を重ね、半年ほどでサイト上で運用を始めたいと思っていました。
ーー ご自身も知識ゼロの状態からのスタートでしたが、どのように解決しようと思っていましたか?
最初は全く解決できるイメージがなかったです(笑)。私自身のキャッチアップは進んできて、一定のゴールは見えてきたんですが、実行段階が見えていませんでした。
もちろん、社内には知見があるメンバーはいませんでした。今から選任して育成する場合だと、いつワークし始めるかまでは見積もれないため、コンサルティング企業や機械学習系のベンダーへの外注、または専門人材の採用しかないなと思っていました。
まず、コンサルティング企業や機械学習系のベンダーへの外注を検討したんですが、社内の知識がない状態で、投資対効果や完成までの期間の見立て、どういう軸で投資判断をするかが不明確でした。
その中で数千万円の費用をかけて発注・納品という関係で進めていくのはリスクが高いという判断になりました。そこで内製を本格的に検討し始めました。
ーー 内製となると、データサイエンティストの採用に取り組まれたんですね。
はい。採用を試みたんですが、こちらも困難が多くありました。機械学習を立ち上げるゴールはおぼろげに見えていたものの、実際何から手をつけようかという状況だったので、職務要件が全く書けなかったんです。
そこで、人材データベースにスカウトできる採用サイトを利用してみたんですが、求めるスキルセットの方は見つかりませんでした。
ーー どのような方を探されていたんですか?
弊社がやりたい事をできる人となると、「大規模ECサイトのCRMの設計を経験した人」という条件になるんですが、そのような方は既にどこかで活躍しているため、転職データベースの顕在層としてはなかなか見つけることができませんでした。
さらに、面接まで想像しても、正社員の採用では面接してから内定までの期間、その方が入社してくれるまでの期間、それぞれのリードタイムを鑑みると早くても3~6ヶ月の時間が必要です。このスピード感を当社として許容することはできないと思ったんです。
2. 採用もコンサルも難しくなった時に副業・フリーランスに着目。1週間でデータサイエンティストとマッチング。
ーー クラウドリンクスを使ったきっかけを教えてください。
コンサルや外注がダメで、採用しようとしても難しいとなったときに、副業やフリーランスの人に入ってもらうという選択肢が頭をよぎりました。知見を持ったプロフェッショナルの方にジョインしてもらった方が、スピード立ち上げには適しているんじゃないかと思ったんです。
クラウドリンクスさんは、一流企業で活躍している方が副業で登録していたり、ハイクラスなフリーランスの方がいらっしゃるという事で、募集をかけてみることにしました。
ーー 募集からマッチングまでの体験はいかがだったでしょうか?
最初は他社さんの募集を参考にしていたのですが、そのスタイルや空気感が特徴的でした。採用のように企業が「このスペックの人をこのお給料で」という感じではなく、「僕ら全力で考えているんですけど、分からないので助けてください」というようなスタンスで募集することができるんです。
過去に知識が足りず職務要件が書けなかった経験があったので、課題とお願いのように募集できる雰囲気は肩の荷が降りる感覚がありました。経営では誰も経験がないことをやらなければいけないという状況は頻繁に発生するので、知識ゼロの状態からでも課題を解決できる方と出会えるというのはかなり心強いなと思いました。
ーー マッチングしたのはどのような方でしたか?
私たちのピンポイントな要求にドンピシャのご経験を持つ、データサイエンティストの鶴野さんという方です。大学卒業後、AI領域のベンダー企業で複数業界のクライアントに向けてコンサルティングからプロジェクトの要件定義・開発・導入までをご経験されている方です。
過去に採用サービスで探した時には鶴野さんのような方は全く見つからなかったですし、そもそも転職市場にはいないと思うので、恐縮してしまって(笑)。むしろ面談の最初の方は、うちで大丈夫ですか?興味ありますか?手伝ってくれるんですか?という感じでした。
ーー 面談ではどのような事をお話ししましたか?
弊社の事業とマッチング精度の課題をお話しした上で、機械学習を本気で導入していきたいというお話をしました。すると鶴野さんから、「今の会社規模や事業のフェーズに興味があり、マッチングプラットフォームという型をとる事業で、機械学習の立ち上げを手動で切るというところに関心がある」と言ってもらえた。それを受けて、私も面談の場で鶴野さんと一緒に機械学習部門を立ち上げていく事を意思決定しました。
ーー どのような形で参画してもらうことになったんですか?
鶴野さんには企業のビジョンにもご賛同いただいていたのですが、現在フリーランスであるということもあり、「最初から正社員という感じだとお互い重いよね」という結論になったため、最初は業務委託契約という形でお願いすることにしました。
面談後は、社内の予算調整で稼働開始してもらうまでに2週間お待たせしてしまったのですが、本人は「来週からでも」と言う感じだったので、非常に満足いくスピード感で参画いただけたと思います。
3. 稼働開始3ヶ月で機械学習エンジンの完成が見えた。
ーー 鶴野さんが参画されて3ヶ月が経ちますが、プロジェクトの進捗はいかがですか?
現時点でも本当に助かっていますし、今後の機械学習の本格的な運用開始に向けても手応えはかなりあります。まず、参画から1ヶ月間でアソビュー!のデータ活用上で課題になるポイントを全て洗い出してくれました。
私としては一定のデータが溜まっている認識だったので、そこの資産性というものに期待していたんですが、鶴野さんに見ていただいて、データを活用するという観点からは全く資産になっていないということがわかりました。
それまでは全く経験がなかったので、鶴野さんに入ってもらってデータの資産性を評価してもらい、3ヶ月くらいでプロトタイプができる、というようなイメージだったんですが甘かったです(笑)。
ーー 今後について教えてください。
ただし、課題が明確になった分、やることも明確になりました。使えるデータにするところから始める必要があるということが発覚しましたが、採用という形だと3ヶ月でそこまではたどりつけていなかったと思います。
課題分析の後、2ヶ月で社内の開発各チームを取りまとめてくれたことで、1年分の開発ロードマップを決めることができました。プロジェクトマネージャーとしても動いてくれていて、開発各チームとのすり合わせからバックログ管理までプロジェクトの中核として活躍いただいています。
今後も鶴野さんにプロジェクトをリードいただきながら、検索精度を向上させ、サービスをより良いものにしていきたいと考えています。